サイコロと坂道
りょう

「おじいさん こんにちは
 また会いましたね」

  おや あんたかい
  また会ったね

「こんな坂道で
 今度は何を拾ってるんですか」

  おったまげたねぇ
  分かるかい
  今度はサイコロを
  ひろっているんだ

「この夕暮れ時にですか」

  そうさ
  この時間が一番なんだよ

「なんでま―」

  みんなこの時間に
  サイコロを振りながら
  坂道を登っているからさ
  何歩進むか
  何歩戻りたいか
  そればかり気にしている
  だから
  誰かが投げた瞬間に
  サッと拾ってやるのさ
  そんなのがなくとも
  大丈夫なんだよ
  あんたも
  誰かのサイコロを拾ってやんなさい
  楽しいもんじゃよ

「それって泥棒なんじゃ…」

たわいない話をして
挨拶して分かれたが
聞き忘れたことがあったと
家に帰ってから気づいた
「集めたサイコロで
 振り出しに戻りたいのですか」と
もちろん おじいさんは言うだろう

  まさか
  集めるのが
  ただ楽しいだけさ と


自由詩 サイコロと坂道 Copyright りょう 2009-12-23 10:03:38
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