埼玉出張記
相田 九龍

 今月の初旬から始まった埼玉の基地での研修が、明日終わる。今年度で転職が決まったので近々退職する予定があるが、昨年から自衛隊に勤めている。(自衛隊に興味がある方は問題ない範囲でお話ししますので遠慮なく言って下さい。)
 今回の出張の目的は大きな基地にある機材と業務の見学であったが、和歌山にある原隊(普段勤めている基地)の隊長から「仕事もだが、休日は歌舞伎などの普段触れられない文化に触れてくるように」とのお達しが出たので、お墨付きを得て休日は東京周辺の詩の文化を見て回った。




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 12日の夜、服部剛さんの心遣いで、以前から会いたかった方々に声をかけてオフ会を行った。遠く茨城の水戸から来て下さった方もいて、とても楽しくて嬉しいオフ会だった。詩誌「反射熱」を購入して、反射熱の活動のお話や、服部剛さんがベンズカフェでされている「ぽえとりー劇場」などのお話を聞かせていただいた。批評祭に関する突っ込みを向けられたが、うまく答えられなかった。

 詩誌「反射熱」は岡部淳太郎さん主催の同人で、今月初めに完成したもので第五号目となる。詩誌で活動されている詩人さんも期待されているそうだ。5号では三角みず紀さんの特集が組まれており、ついさっき三角さんとの対談と評をパラパラと読ませていただいたのだが、大変興味深かった。



 13日。
 東京駅から連れとスカイバスというものに乗った。知らなかったけど、東京って明治時代からの建物とか結構残ってるんだね。

 夜。高田馬場のベンズカフェに行き、服部剛さんが司会をされる朗読イベント「ぽえとりー劇場」を観せていただいた。12月は年末恒例の「紅白」(女性組と男性組に分かれて競うゲームを取り入れる形式)で、朗読の内に秘められたパワフルさもさることながら、朗読の合間には紅白恒例の応援合戦などもあり、人前で朗読をしたことのない私は東京の詩人さんたちの力強さに圧倒された。
 印象に残る朗読をされた方はたくさんいらっしゃったが、現代詩フォーラムにもいらっしゃる、TASKEさんとヘンナーキョニューりなさんの朗読にはそれぞれ違う意味で驚かされた。
 朗読イベントというのはそれぞれ主催者や参加者によって雰囲気が変わるそうだが、「ぽえとりー劇場」は参加者が朗読に込めた深い思いや熱意ごと服部剛さんの持つ温かみが会場全体を包んでいて、とても和やかな朗読イベントだった。
 朗読に挑戦される方は色んなイベントの雰囲気に触れて、拘らず自分に合うところで腕を磨くのが良いと思う。そのイベント選びの中で、ぽえとりー劇場を候補に入れることは決して間違いじゃないな、という印象を持った。

 この日、子育てで忙しい中駆け付け、紅白の審査員をされていた大村浩一さんにもご挨拶することが出来た。私自身あまりうまく話すことが出来ずもどかしかったが、今月初めの詩人さんとのお別れが、顔を見せて挨拶することの大切さを、とても静かに深く教えて下さっているように思えた。
 大村さんから反射熱5号に載っている対談の話を少し伺い、大村さんの人の良さが見えた気がした。

 (このイベントの詳しい内容は服部剛さんのmixiの日記で細かく書かれているので、詳細はそちらをご覧下さい。)




 今まで東京を毛嫌いしてきた部分が私にはあるが、色々人と会ったりイベントを観たりして東京もそんなに悪くないな、と思うようになってきた。高いビルがあったり、自然が少なかったりするが、人が息づいていることには変わりがなくて、一人ひとりの心遣いの温かさというのはどの街でも変わらないものだな、とそんなことを感じた。



 15日夕方。池袋のジュンク堂に行った。本の在庫数が日本一だそうで、八階建てくらいのビルが全部本屋になっている。
 三階が文芸書籍のフロアとなっていて、詩集と詩論と批評が別々にしっかり市民権を与えられていた。他の本も見る予定だったが門限までの三時間、いっぱいいっぱいそのフロアで本を見ていた。
 三角さんの詩集は本屋でよく見るが、最果タヒさん、文月悠光さんの詩集も当たり前のように置いてあった。最近刊行された文月さんの詩集に対する批判を伝え聞いたことがあるが、そりゃ彼らが嫉妬しちゃうのも仕方ないなと思った。







 20日夜。
 「ぽえとりー劇場」と同じくベンズカフェで毎月行われている「 Price Prize the Words 」という稀月真皓さんが主催・進行をされているスラム形式のイベントを観に行った。オフ会を兼ねて行ったため、あまり朗読を聴けなかったのは残念だったが、とても会いたかった二方とお会いして沢山お話しすることが出来た。服部さんや他の方ともようやく普通に話せるようになって楽しかった。
 イベントが終わった後、近くのファミレスにでお話しをして、12日のオフ会ではうまく答えられなかった批評祭に関する疑問にも、少しずつ言葉にしてお答えすることが出来てきた。
 詩に対する考え方、捉え方は本当に人それぞれですれ違いも時に起こる。でも同じ対象に真剣に向き合っている人同士が確かに共有出来る意識がある。下手糞な作品しか書けないような自分でも、そういうものを共有して途絶えさせることなく伝えていくことが出来ればいいな、と思った。


散文(批評随筆小説等) 埼玉出張記 Copyright 相田 九龍 2009-12-23 03:34:27
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