あなたにここにいてほしい
真島正人
1
僕はあなたに
亡霊であり
生ものであり
影であり
車であり
スプーンであり
無垢の造型であることを
求める
あなたにここにいてほしい
日々
僕は
あなたになってゆく
そのことがとても
もどかしい
2
あなたにここにいてほしい
亡霊のように
影のように
ケーキの下地のパンのように
ただここにいてほしい
あなたがはなれてゆくと
僕は半分崩壊する
そしてぼくは
心もとないままで
生きてゆく
やがて僕はあなたをわすれる
乳房のこと
肌のこと
目のこと
声のこと
乳房から出ていたミルクは
すでにもうほとんど
忘れてしまった
けれども
蜜月は
去ったので
あなたはもう
影でいい
3
あなたは
無機物であるべきなのかもしれない
とても
自動的に動く
息をする無機物
僕はあなたを
ラジオのように扱ってきた
それがどんな意味を持つ行為だったのか
なんとなくわかる
でも
あえて
答えは自覚しない
あえて
あえて
ぼくはあなたにここにいてほしい
4
何も話すな
なにも
してくれるな
何も話してはならない
けれども
あなたにここにいてほしい
5
溝のように
深く
壁のように
厚く
壁のようにざらつき
あなたの中には
河が流れている
河の中には
魚の形をした
白血球
がいる
僕は
あなたの河の一部を
からだに注ぎ込んだ
あなたにそばにいてほしい
あなたにそばにいてほしい
あなたにそばにいてほしい
6
僕はあなたを嫌い
僕はあなたに依存している
あなたに助けられている
理由ではなく
意味として
僕はあな
たにここにいてほしい