あなたにここにいてほしい
真島正人



僕はあなたに
亡霊であり
生ものであり
影であり
車であり
スプーンであり
無垢の造型であることを
求める

あなたにここにいてほしい

日々
僕は
あなたになってゆく
そのことがとても
もどかしい



あなたにここにいてほしい
亡霊のように
影のように
ケーキの下地のパンのように
ただここにいてほしい
あなたがはなれてゆくと
僕は半分崩壊する
そしてぼくは
心もとないままで
生きてゆく

やがて僕はあなたをわすれる
乳房のこと
肌のこと
目のこと
声のこと
乳房から出ていたミルクは
すでにもうほとんど
忘れてしまった
けれども
蜜月は
去ったので
あなたはもう
影でいい



あなたは
無機物であるべきなのかもしれない
とても
自動的に動く
息をする無機物
僕はあなたを
ラジオのように扱ってきた
それがどんな意味を持つ行為だったのか
なんとなくわかる
でも
あえて
答えは自覚しない
あえて
あえて

ぼくはあなたにここにいてほしい



何も話すな
なにも
してくれるな
何も話してはならない

けれども
あなたにここにいてほしい



溝のように
深く
壁のように
厚く
壁のようにざらつき

あなたの中には
河が流れている

河の中には
魚の形をした
白血球
がいる

僕は
あなたの河の一部を
からだに注ぎ込んだ

あなたにそばにいてほしい
あなたにそばにいてほしい
あなたにそばにいてほしい

6

僕はあなたを嫌い
僕はあなたに依存している

あなたに助けられている

理由ではなく
意味として

僕はあな
たにここにいてほしい



自由詩 あなたにここにいてほしい Copyright 真島正人 2009-12-23 01:20:46
notebook Home