わざと引きずる脚がもうない
因子

おしまいに向かって
呆けたからだは歩いていた筈だった
私の知っていたおわりはもうとうにすぎて
知らないおわりと
知らないはじまりが
叩きつけるように吹いてくるのを
ひとつもつかまえられないまま
ただ味のない呼吸をしている


もっとはやく飛び込んでいたら
きっとこわいものなど何もない筈だった
生を知る前に、
いのちを知る前に





私はあなたになれないから
私のことが可愛くない


理解するのが怖いから
おんなじ道は歩けない



ことばはつづく
足が痛くても
どこへも行けなくても
こんな命でも


自由詩 わざと引きずる脚がもうない Copyright 因子 2009-12-22 15:41:26
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