『刃零れ落ちたらサヨウナラ』
Leaf
刃零れ落ちたらサヨウナラ
片目瞑った砥石、仕舞ったままではただの物質
尚更、問い質したい頑なな意志
尖り続けようとすればするほど
肩に力ばかりが入ってしまって
鈍る切っ先、僕らの明日は切れない
駅からの帰路にオートマティックな夕景を見た
丸まる背中に追い討ちの優しい光り
クリーピングし続ける空き缶が転がる商店街の下り坂
カラン、コロン、カラ、カラ
風は容赦しない
追い越し際に鋲をばら蒔き、T字路にぶち当たるまで吹き付ける
錆び付いたグランジ・シャッターの取っ手から頽廃がカタカタ鳴っている
ブロック塀も何のその、壊しちまえよと腰紐を緩める夕影
肌荒れに発疹で引っ掻き傷
挙げ句は瘡蓋、ワタシは絆創膏だらけのイチ皮下細胞
そう、認めたくないけど自分の身体は脆弱な単細胞で出来ているんだ
何がなんでも瞳孔だけはしっかり見開いて
左右ギョロギョロ確かめて
あ、
物騒な口は仕舞って
マスクをすれば知らんぷり出来るか
全てが消滅する訳じゃない
柔らかな繭の糸に包まれたくて吐き出す白い空
ポッケに手を突っ込んで足早に去る
街ゆく人たちの雑踏に揉まれた綻びを見つけてくれよ
一体全体、自分の居場所は何処なんだ?
歩幅狭く、歩数多く
せかせか、せかせか
みんな襟たてて急ぎ足で家路に着くんだ
埃被った砥石でも削られ凹んでゆくのだけれど
誰に磨かれるのかなんて
誰が磨くのかなんて
全く気にしない
ただ単に其々の巣に還るだけ
でも、それでもきっと
刃零れ落ちたらサヨウナラ