夜を愛す
六崎杏介

(深夜、薄荷煙草を以て出廷せり)

色街の電気光に射られた雲が遠くに浮浪する刻限
を歩く、訪れない睡蓮とは手を切った その手に
小銭を幾ばくか 煙草を買いに遊歩している コ
イン4枚のお告げ、一つ目の辻で一枚を投げて表
裏のどちらかを出す それを四つ目の辻迄繰り返
す 十六通りの世界の中で、貴方が一番甘美な痛
みの持ち主です、恋人への贈り物を考えましょう
って 僕は自分の為の煙草を選んでいる 遊歩は
いつしか街灯に導かれて、ああ 「君が僕を裁く
神かい?」巨大アパルトメント群 音も無く風も
無く、ただ光をたたえて その厳格な質量に 僕
は何の釈明もせずにうずくまって 震えて朝を待
つ。


未詩・独白 夜を愛す Copyright 六崎杏介 2004-09-21 18:47:51
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