美しく積み上がった世界の中で
あ。
そのうち通り過ぎるだろう
ほんの気まぐれな天気雨
一面の田んぼだったこの辺りは
ほんの少しの間に住宅街になった
たくさんの家が整然と並べられ
目線を上に持っていけば
規則的に並ぶ青い屋根が見える
雨は均等に分け隔てなく青に注ぎ
斜面をつるつると滴り落ちてゆき
積み木遊びが好きじゃなかった
綺麗に作るのが得意じゃなかった
何となく積み上げて何となくそれっぽい
特に不満もなかった、それで
整然と積み上げた完璧さがやだ
繰り返された美しい景色がやだ
曖昧が許されないこの雨がやだ
いらいらして祈るふりをしてみたら
あんなに降っていた雨があがった
さらりと太陽が顔を出す
本当に天気雨だったらしい
ぼんやりとそう思っていただけなのに
祈りが通じたなんて思ってないよ
理由は全部、霞の向こうへ
通り過ぎた雲の裏側へ