篭もるケモノの見る夢
within

水銀の雨が地面を潤し
地中に浸透し
しきれない分は溜まりを作る

今は冬篭りの季節だから
昼間は寝ている

一匹のケモノになって
陽の光の届かないところで
身体を丸めて眠っている

眠っているときは安心で
悪魔に襲われることもないから
僕は幸せなほうかもしれない

悪夢に悩まされる友人のために
バクを探す旅に出ようか

黒い毛に覆われた
鼻の長い猪のようなケモノ

昼間は眠っているから
夜のうちに
冬の厳しさが増す前に
バクを探す旅に出ようか

どこまでも広がる
文字のない世界

暖かい布団と
満たされた胃と
少しばかりのアルコールで
君のいない淋しさを紛らわせる

バクはいったいどこを歩いているのか?

目の前を流れる川に
足を浸けたくなる
冬の川は冷たいけれど
身のしまる思いで
緩慢な意識が ぐっと手元に
戻ってくる

君に必要なものは
僕の探しているものとは
違うかもしれない
そんな気になったのは
君の心の中心が
どこにあるのかわからないから

どこまでも空白が広がっている
そこに何を置いてもかまわない空白が
広がっている

僕の世界は
だだっぴろい荒地が広がっているだけ


自由詩 篭もるケモノの見る夢 Copyright within 2009-12-16 16:35:36
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