Holy night
月乃助



まるでそれは、
やってくる 物質の
そんな重さや たしかさがある

―――――――【 night 】――――――――――――――

逃れようもなく
完璧に閉じられる
空も街も一面 ローブをまとった
聖堂に灯された蝋燭達が求めるものは、
ライトに飾られたツリーの灯りが請うのは、
通りをゆく少女たちのにぎやかな唇が追うのも、
けっして陽の光などではない
それを拒んだあげくに、
この星空に生まれるものすべて



気づいたなら
夜空のはしで
象徴となる明かりを手に入れるはず
すべてを蓋い尽くす おごそかな闇の
現象などと誰もが口にすることをはばかり 疑わぬ
holy night
肌をつめたくし、凝視しながら
清らかに、喜びを知ったものたちは、
だれも

路地裏をゆく
闇中の野良猫の用心深い足取りさえも
それに気づいたわずかな光を集める瞳の細心さをみせ、
にぎやかなショー・ウィンドーの
ダンシング・ドールたちは
ぬくもりをもとめ身を寄せ合い、

瞼を閉じ耳を塞ぐ
体をゆっくりと横たえ眠りつく
生きるもの達の完全に身動きをやめた 無垢な夜が 今
始まろうとしている
それを感じることなど
難しいこともないのに、



この世界に
最初に求められたものが光りであろうと、
それ以前にすでに空虚な闇は、夜の姿で存在した
光が神々しくいられるのは
それがため

そこから解き放たれた今宵、
救いがもたらしてくれる
安堵と喜びに
みたされ



灯りを消して 見つめれば
あらわれるのは、
不思議と 穏やかな静謐さ
それをいっそう得るがため 
光りがあったらと
いつまでも、
いちずに
祈る








自由詩 Holy night Copyright 月乃助 2009-12-16 08:52:46
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