浮舟
相田 九龍

眩しい光が深夜の通りを彩って
堀に流れる葉を浮かび上がらせる
白熱灯と蛍光灯の混ざり合う照明が
文化と文明の間の小さな隙間にある
たくさんの人の吐息の白さと
風と風の隙間で
世界と一致していく
僕と彼は
失われた時間が積み上げた
夥しい虚無を持ち寄って
虚無よりも深い何かを
そこに置き去りにする
多くの人が
それを知らずに踏み潰す


酔っ払いが一方通行の道に寝転がって
客を探すタクシーの行く手を遮る
それに構わずおっぱぶの兄ちゃんは
行き交う男たちの呼び込みに精を出す
手相占いのおばちゃんが隅の方で
椅子に小さくなって座りながら
蝶々になって宇宙を飛ぶ
僕らは鬼がすぐそこに迫っていることを感じながら
命の洗濯をする

噂をすれば影が揺れて
誰かが捨てたコンビニの袋の端を
視界の隅で認めながら踏み潰していく
堀に浮かんだ小さな葉が
それにつられて少し身をくねらせる


自由詩 浮舟 Copyright 相田 九龍 2009-12-16 03:34:19
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