浮舟
相田 九龍
眩しい光が深夜の通りを彩って
堀に流れる葉を浮かび上がらせる
白熱灯と蛍光灯の混ざり合う照明が
文化と文明の間の小さな隙間にある
たくさんの人の吐息の白さと
風と風の隙間で
世界と一致していく
僕と彼は
失われた時間が積み上げた
夥しい虚無を持ち寄って
虚無よりも深い何かを
そこに置き去りにする
多くの人が
それを知らずに踏み潰す
酔っ払いが一方通行の道に寝転がって
客を探すタクシーの行く手を遮る
それに構わずおっぱぶの兄ちゃんは
行き交う男たちの呼び込みに精を出す
手相占いのおばちゃんが隅の方で
椅子に小さくなって座りながら
蝶々になって宇宙を飛ぶ
僕らは鬼がすぐそこに迫っていることを感じながら
命の洗濯をする
噂をすれば影が揺れて
誰かが捨てたコンビニの袋の端を
視界の隅で認めながら踏み潰していく
堀に浮かんだ小さな葉が
それにつられて少し身をくねらせる