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ひとなつ

「ゴミ捨て頼んだよ。」

そう言い残し、君は着ぐるみを着て出て行った。

かわいいクマの着ぐるみ…

でも君はそんなのを被らなくったってかわいい

でも会社の上司がクマ好きだからそうしてる。

これは仕方のないことだ。

そして今日は木曜日、電池の日だ

僕は約700本くらいある使用済みエボルタ電池をごみ袋にまとめて、

隣近所の老婆の家の煙突にぶちまけた。

「ありがとぉ坊や」

煙突の奥から元気な老婆の声が反響して聞こえてくる。

それは殆ど木曜日の楽しみと言ってもいいくらい、

僕はこの声に元気を貰う。

しかし、大抵いつもこのゴミ捨てに行ったあと、

僕は家の玄関の前で倒れてしまう。

“電池切れ”だ

しかし、家に入らなければ爆発に巻き込まれてしまう。

僕は這いつくばって玄関ドアを開け

鍵を3重ロックし、密閉ボタンを押した。

今日はギリギリセーフ

老婆の家が爆発する音がドア越しに聞こえる。

同時に老婆の柔和な笑顔は、花火になって空に浮かび上がったことだろう。

見に行きたいが、もう電池がない

ここで電池が切れると月曜まで君に会えないのに。

僕は僅かな電力をキープしつつ自分をシャットダウンした。


これで今夜も君に会える。

しかし、セットしておいたタイマーで20時に起きると、

君はまだ帰ってきていなかった。


僕はギリギリの電力でこの手紙の続きを書いている

今夜は本当に君はクマ鍋にされてしまったのではないか…

そう心配する僕の身にもなって欲しい。

それと電池が切れる前に君に一つだけお願いがある。

また月曜日になったら、電池を交換してね。




自由詩 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ Copyright ひとなつ 2009-12-14 20:43:06
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