水手の国
海里

長いあいだ
船は漂い続けている
櫂を差し伸べて水をかくものが
一人もいなくなって久しいので

凪いでいても
荒れていても海は
その姿をただ自分のみに負うのに

水手の国は過去の国
方舟は漂うばかり

真っ白な霧の昼間には
霧笛を鳴らしながら行こうよ
もう一度
夜には航海灯をかかげて

舵を切るものと
漕ぐものと
流木でもいい
甲板の一枚二枚はがしてでも

オリーブの大地は見つからなくても
同じように漂っている船に会えるかもしれない

自分たちではない誰かに
自分たちとは違う何かに


自由詩 水手の国 Copyright 海里 2009-12-12 22:49:04
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