とおりゃんせ
楽恵
とろりとろりと
日が暮れて
お社の石灯篭の暗い影
僕の背丈より
いつの間にか長い
鬱蒼と生い茂る鎮守の森
空にはねぐらに帰ってきた鴉の
黒く騒がしい群れ
忍び寄る夕闇せかされて
どこかに星がひとつだけ
朱色の鳥居の下
仲良く並んで歩く君と僕
学校帰りの君は
鞄の中から何かを出した
朱く塗られたお面のような何か
この先に
天狗の骸が埋まっているの
君は囁くように呟いて
小走りで参道の石畳を進んでいく
背後の竹林のあいだから
誰かがこちらを見ているような気配
埋められた天狗の仲間かと思う
前をゆく君は
僕の名を呼んで
ひらひらと手招き
そもそも君は誰だっけ
背中に誰かの視線を再び感じ
振り返ると
丁度
宵待ちの月が
朱い鳥居をくぐり抜けていくところ