駄菓子屋のソネット
あ。
駄菓子屋の側に置かれた自動販売機は
存在を知ったときからもうおんぼろで
お金を入れてボタンを押しても
蹴っても叩いても何も出てこなかった
お店を切り盛りしていた女主人は
存在を知ったときからもうお婆ちゃんで
いつも食パンを焼いては機械で切り分け
どのお菓子よりも丁寧に並べていた
あれから二十年以上のとしつきが流れ
自動販売機は姿を消してしまった
駄菓子屋のお婆ちゃんは御隠居生活で
それでもかつて店だったところに座っている
今、胸を覆っているものの名前を
わたしは、知らない