私は
都志雄
私はパチンコはやらないけれど
自転車で峠を攻める月曜日には
「今日は出すぞー」となるのだろう
私はタバコは吸わないけれど
オフィスで休憩の後に小さく吐き出すため息も
紫煙と変わらぬ味なのだろう
私はテレビドラマは観ないけれど
もはや古い地図が一枚あれば、飽きもせず
時空を旅していられるだろう
私は夜遊びには行かないけれど
毎晩部屋にこもって己に還り
向きあい交わす秘めごとだけが、何よりの救い
私は女性に惚れることはないけれど
彼への「あえてその名を告げぬ愛」の泉に独り臥す
常夜灯に粘りつく、この夜だけは決して明けない
私は歴史は知らないけれど
正嫡たちの哄笑と
異物を弾く眼光と。
体に刻み込んできたぶんだけ
知っている