捨て色
かんな



あの子が描いたはじまりの色は
指で押さえたキャンバスの少しずれたところにぽつんとあって
じいっとそれを見つめていた

描き出された自画像の背景に色をたしてゆく
淡いブルー、またはグリーン
そんなイメージを抱くひとのこころはきっとどこまでも透明で、少し儚い

はじまりとおわりの色の間でひとはいくらかのものを抱えて生きていて
抱えきれないものを捨てる行為は
ほんとうの宿命だと、そう思って捨てている

捨ててゆくものにあの子が小指で色をつけている
かなしいとかやさしいとかいう意味ではなくて
おわりの色に染まらないようにと祈りながら、つけていく
捨てることはそのもののおわりとはちがうから

淡いブルー、またはグリーン
そんな背景色の中でほほえむあの子は
いつかのわたしなのかと、小指についた色を見つめる
これから先、おわりの色に出会うときがきても
どこまでも透明に
どうか
ほほえんで



自由詩 捨て色 Copyright かんな 2009-12-06 14:00:14
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