逃げるように二人
瀬崎 虎彦

夜はとめどなく凍り続け 
ミニカーで走る高速道路は閑散としている
星間トンネルを抜けるころには
シリウスが輝きを失って氷の塊が無数に路面を舞っていた

冷え切った心を包むのはアーガイルのセーターと
血の気の引いた僕の粗末な肉体だけだ
薄汚れることのないように死守してきた品性は
ルームミラー越しにかわいい寝顔を見せる君に託してある

逃げるように二人 冷たい夜を落ちていけば
透明高速は青いミントの飴細工となり
ステレオから流れるゲッツ・ジルベルトも優しい

逃げるように二人 悲しい夜を落ちていけば
澄んだウィンドスクリーンに凛と鳴る
朝焼けのグラデーションに身をすくめるばかり


自由詩 逃げるように二人 Copyright 瀬崎 虎彦 2009-12-06 00:44:16
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