樹木
岡部淳太郎

くるっても
いいのだろうか
という言葉をおしころして
公園へむかう

身ぐるみはがれる
とはこんな気分だろうか
この身をくるんでいた
ものたちはどこにいるのか
いまも元気で
やっているだろうか

そんなことを思うこともなく 思い
見知らぬ公園へと入っていく
まんなかでは子どもたちが
何も気にすることなく
むしんであそんでいる
すみにはいくつかの木々がたっていて
その身をむすうの
葉にくるませている
さなぎが永劫の周囲をめぐって
成虫になるように
樹木が一回転すれば
それはもう樹木とは似て非なるものと なるだろう
人だって
くるっと 一回転して
人でなしに
ならぬともかぎらない

いまはまだ葉をつなぎとめて
みずからをまもらせているこれらの木々も
夕になり 夜になって
さむい時に
もっともまもってもらいたい
時になって
見捨てられ
葉はいっせいにおちはじめるのだ

くるっても いい?
誰かにきかれたようにおもえて
樹木をふりむく



(二〇〇八年九月)


自由詩 樹木 Copyright 岡部淳太郎 2009-12-04 22:04:14
notebook Home 戻る