あまのじゃく
中原 那由多

平坦な道をとぼとぼ歩いていくことが
いつしか当たり前になっていて
地図にない道を通ろうとすることを
鼻で笑うことが多くなった

冗談を言うつもりはさらさらない
仮にそうであったとしても
理屈っぽさしか残らない


湯船の月をかき混ぜて
おこぼれをもらいたかった
欲しがるたびに遠ざかり
もういいです、と飽きたにも関わらず
再度飛びかかろうとしたことは
曖昧さを誤魔化すことさえ出来なくて


不意にひがみたくなる

ショーケースの中の指輪を眺めるばかりで
結局誰かに先越されてしまった


……あれから二年


足りないものを補おうとしないままに
とうとう鍵をしまった場所を思い出せなくなっていた


分からず屋の独りよがりは
決まって芝居がかった日常会話に始まり
体育座りに終わってゆく

萎れた苗に水をやりたかったが
蛇口はただ頑なに黙秘を続けるばかりであった



自由詩 あまのじゃく Copyright 中原 那由多 2009-12-03 21:45:11
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悠希子