未だうまれぬわたしのこども
笠原 ちひろ



実家に帰ると
母は今の母で
わたしが思っているお母さんとは違う
いろいろあったもんね
川の形だって水の流れで変わるんだもんね

でもわたしの頭のなかのお母さんはやっぱりいつも不幸で
あたしが部屋にこもっていても
壁ごしに何かに八つ当たる音が聞こえてきていた記憶

気を抜いたら
いまのお母さんじゃなく
そんなお母さんを思いだすから
こわいよ
もういないものに対して
憎しみにふるえる
自分が嫌だよ


自分のこどもには
そんな思いはさせたくないと
万全を期したいと
決心するのだけれど

万全を期したいと
やる気まんまんだったお母さんが
あたしにはとても負担だったことも
あわせて思いだすから
困る



野放図に愛したいな!



妊娠の予定はありますか?
と聞かれたわけは
今のんでいる薬の中には
胎児に影響があるやつも
含まれているかららしい

うっかりと感極まった愛しい夜に
感極まって「仕込み」たいけど
それは今はよしといたほうがいいらしい
だいたいそろそろこれくらい?
そんなふうに照準あわせて
調整しなくちゃならないらしい
なんかあったらアレだから
わかってるリスクには万全を期したい




感極まって仕込みたい
万全を期したい
野放図に愛したい
万全を期したい
計画なんかしたくない
万全を期したい


天秤量りはゆれていて
結局わたしは
万全を期す、ほうを選ぶのだろうと思う



わたしも知らなかったのだけど

未だうまれぬわたしのこどもを



わたしすでに愛してるみたいだ



携帯写真+詩 未だうまれぬわたしのこども Copyright 笠原 ちひろ 2009-12-02 17:56:01
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