珈琲と黒真珠
楽恵

新月

月が新たに生まれ変わる夜

世界は何処も彼処も

静かなる闇夜



時計の針が12時を回って

私の眼はますます冴えてゆく


カップには

黒真珠のように鈍く光るブラック珈琲

今宵私が眠れないのは

濃く淹れたこの珈琲のせいなのか



あの晩

たまたま通りかかった古びた洋館の窓辺で

昇る月を待っていた赤毛の娘

今宵はどうしているのだろう



それを考えると

私はますます眠れずに

我が家の重い扉を眺めている



いつの間にか空いたカップに

再び濃いブラック珈琲を淹れる



私もまた誰かを待っている

あの赤毛の娘のように

眠れずに

誰かを待っている



それが誰だったのかは

忘れてしまったのだけれど




自由詩 珈琲と黒真珠 Copyright 楽恵 2009-12-02 01:28:33
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