並木道に舞う飛行機
あ。

小学校四年生くらいの頃だっただろうか
クラスで紙飛行機が大ブームになった
授業が終わると男の子は一斉に折り紙を取り出し
思い思いの折り方で様々な形の飛行機を作り
外に飛ばすと先生に叱られるので
教室の中は色とりどりの飛行機が飛び交っていた


折り紙が得意なわけでもない女の子だったわたしは
黙って図書館で借りた本を読んでいたり
友だちとお喋りしたりしていたんだけど
大抵の女の子よりも背が高かったためか
飛行機の衝突率はほかの子よりも高かった


母が結んでくれていたポニーテールのさきっぽに
後頭部に突き刺さるように
うっかりしていたら頭の上に


勢いを落とした飛行機はこつりとぶつかり
そのあまりにもかすかで控え目な感触に手を伸ばすと
やけに勇ましい絵が描いてあったりして
何とも言えない裏切られたようなやるせない気分になる



そんなことを思い出すのは
冷たい風に押し出されてひっきりなしに降りかかる
赤い紅葉や黄色い銀杏のせいだろう


きちんと等間隔で植えられた並木道は
はらはらと地面を彩ってゆく
途中に立ちふさがっているわたしは
彼らの進路を強制的に変更してしまい
その際にこつりこつりとかすかな感触を残し


とうに風化してしまった小さな出来事を思い出させ
帰ろうとは思わない過去をひとつ手のひらで撫で
前に続く見えない線路をよそ見しながら歩く
小さい頃に流行った映画じゃないけれど
実は誰かと一緒に歩いているのかもしれない
ありがちな話だけど
脇には名もない綺麗な花が咲いているかもしれない


ふらふらと時々転んでしまうけれど
紙飛行機だってちゃんと飛ぶんだし


自由詩 並木道に舞う飛行機 Copyright あ。 2009-11-30 22:56:53
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