ククル プリズム
笠原 ちひろ


プリズムを
とおしたひかりは
なめらかな
グラデーション

うつろう色みを取り出して
あか き みどり と
括ってしまえば
そのなめらかさは失われ
大雑把さに囲われる

そんなこととは知りつつも
伝達というものをしたい私たちは
言葉というもので
便宜的に
色を括る


括られきれずに
滴ったものは
ぴちぴちと跳ねながら
プリズムのひかりへと
還ってゆき

ああうつくしいなあ

見とれてしまう




ジャッジなんて遊びみたいなもんじゃん




遊びとわかっているのなら
こんなにたのしいことはない

茜 檸檬に だいだい 朱赤
葡萄 むらさき 烏の濡れ羽
括り閉じ込め並べてみれば
いろとりどりのおはじきみたい


うれしい たのしい あなたが好きよ
かなしい せつない あなたが好きよ
括りふちどり鈴にして
カラコロ鳴らせば
いとおしい


かなしい かなしい 忘れたい
苦しい なかったことにして
括り閉じ込め
標本にして
無害に眺めてみてみたい




プリズムを
とおしたひかりは
なめらかな
グラデーション





自己紹介をしてください
ということだったので
わたしはわたしを
いくつか括り

わかりやすく
並べてみた

ジャッジなんか遊びなんだから

キャッチ アンド リリースで

括ったいくつかのわたしを
またわたしの海に還したら
銀のせびれを光らせたかと思うと


すぐに見えなくなった




自由詩 ククル プリズム Copyright 笠原 ちひろ 2009-11-29 18:47:31
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