ククル プリズム
笠原 ちひろ
プリズムを
とおしたひかりは
なめらかな
グラデーション
うつろう色みを取り出して
あか き みどり と
括ってしまえば
そのなめらかさは失われ
大雑把さに囲われる
そんなこととは知りつつも
伝達というものをしたい私たちは
言葉というもので
便宜的に
色を括る
括られきれずに
滴ったものは
ぴちぴちと跳ねながら
プリズムのひかりへと
還ってゆき
ああうつくしいなあ
と
見とれてしまう
*
ジャッジなんて遊びみたいなもんじゃん
*
遊びとわかっているのなら
こんなにたのしいことはない
茜 檸檬に だいだい 朱赤
葡萄 むらさき 烏の濡れ羽
括り閉じ込め並べてみれば
いろとりどりのおはじきみたい
うれしい たのしい あなたが好きよ
かなしい せつない あなたが好きよ
括りふちどり鈴にして
カラコロ鳴らせば
いとおしい
かなしい かなしい 忘れたい
苦しい なかったことにして
括り閉じ込め
標本にして
無害に眺めてみてみたい
*
プリズムを
とおしたひかりは
なめらかな
グラデーション
*
*
自己紹介をしてください
ということだったので
わたしはわたしを
いくつか括り
わかりやすく
並べてみた
ジャッジなんか遊びなんだから
キャッチ アンド リリースで
括ったいくつかのわたしを
またわたしの海に還したら
銀のせびれを光らせたかと思うと
すぐに見えなくなった