the Transoceanic
都志雄

大陸の灯は臙脂色に蒼ざめた望蜀の礎 
岩頭を蹴った四十億年後の奇形児は
宇宙の一滴として未然形のまま荒ぶ大洋を突き
遺産の頂点で呪符を戴く死出の旅路に夢中でした
光の精度は絶えず寄り添う闇の海岸線をも測量し
かといってひと思いに吹き消すことも冒瀆であると勇者は謗る


胸を射ぬかれた漆黒の青空は涙のアルカロイドと同じ組成の聖跡を孕むようです
か細く泣く未熟児の神学、闇はその静寂に掌を谺させ
いつからか天使たちは、毎朝はるか東方で核戦争を繰り返す
対を絶て、時を刻め
それは名を告げぬ想念の否応なき指令
女王の首飾りはカルタゴの亡霊がいつでも背中合わせの、
しょせんは未来完了形の染料で血塗られていましたね
さらばさらばと吹く風は、ピレネーのふしだらな剣士の滅多に見せぬ赤面かもしれないというのに


円錐の頂点では畏れ、演じなさい
仕方ないんです
超えなさい、超えられぬ海を
雪の上に這い上がった魚はいつかの自分自身なのでしょう






自由詩 the Transoceanic Copyright 都志雄 2009-11-27 23:10:00
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