鳩の多い街
瑠王

死して尚も取引される彼
死を回避しながらも墓石に値をつける詐欺師の群れ
安らかな終焉にまだ続きがあったなら
それでも彼は穏やかに旅立っただろうか


シャーマン達が今日も街中で炎を焚いて
無責任なことを仰せてまわる
彼らは唄をうたっているだけ
全ては神のせいにすればよいのだ
数字達の教祖
視神経が心臓みたい、誰もが頷いてばかり
僕らの冷めきった上っ面を鳩の群れが飛んでいく

アネモネの夢を見た
街は花で埋め尽くされて僕は
誰もが赤いアネモネを咲かせて僕は
(いっそのこと、強い風を望んだ)
その時、空を飛んでいたのは
やはり鳩ばかりだった
つまり僕の深層心理でさえそんなものさ

悲しみの夜明けだろうと朝がドアを叩くこと
同じ青い朝でも昨日より少しは明るいかもしれない
だからみんな生きられる
"朝が来ないこと"なんて単なる言葉に過ぎない
だけど君はもう知ってるんだね


道路にサッカーボールが転がったよ
でも持ち主はもういないんだ

あたたかい食事ができたよ
だけど彼はもうどこにもいないんだ


物語をそっと閉じてあげましょう
さもなくば、もし彼の魂が生まれ変わったとして
紫の夕暮れに薫る野草のような運命を辿るのならば
私達が生んでしまった彼の魂の誤差を
誰が慰めることができるだろう


シャーマン達が今日も街中で炎を焚いて
僕らの冷めきった上っ面を鳩の群れが飛んでいく


自由詩 鳩の多い街 Copyright 瑠王 2009-11-26 14:11:55
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