傷の広場
木立 悟






むらさき
むらさき
光の仕草へ
近づく空


歩いてわたる
歩いてわたる
うつぶせの鏡の群れが浮かぶ水
背から背へ 背から背へ


城壁の角
影が空を仰ぎ見て
月が雲から出るたびに
白く息を吐き出している


窓にはり付く鱗の夜に
何度呼びかけても応えはなく
ひしゃげた鉄の音ばかり
虚ろが虚ろに響くばかり


まなざしは離れ
まなざしは擦り
等距離につらなる雪と雨
羽は擦り 頬は擦り


問いは寄せ 問いは返し
夜の広場は灯にひたる
誰も居ぬまま
影は群れる


背から土への短い間に
星は冷えてひらきひろがる
道に降る蒼
つばさ打つ枝


傷は指さず 傷は負う
重さはこだまし こだましつづける
歩めぬものに夜はやさしい
衣のかたちの楽器を着せる


多胎児の街が空を獲り
うたうことなく記号を並べ
手をつなぎ また手をつなぎ
渦の壁を建て 渦の壁を建て


たなびくことの飽和から
遠い爆発をくぐりぬけ
降りつづくものに身を射られ
水の際にたたずむもの


壁から離れ
夜の砂に沿い
泣いている花を
光を抱く


痛みをたどり 冬に着き
手のひらの地図を閉じるとき
傷は新たな標となって
水の際に点滅してゆく


あざやかな苦しみの青空を経て
目を失い また取り戻し
夜と夜の諍いから降る
迷いの影をふちどってゆく
























自由詩 傷の広場 Copyright 木立 悟 2009-11-25 21:04:18
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