だれもいない部屋
草野春心

 


  だれもいない部屋は/仔犬のように眠っている



  机上の日めくりカレンダー/無数の架空の幾何学模様



  夏の午後の光と影に/わすれられた時がにおう



  (去る/ぼく/わたし
   去る/きみ/あなた
   去る/われら/去る



  (もしもし?/だれか
   もしもし?/「……」



  ワイングラスをつつむように/やわらかい手が延びてきたら



  おやすみをいって閉じる/だれもいない部屋






自由詩 だれもいない部屋 Copyright 草野春心 2009-11-25 15:48:35
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