おはなし。
昼寝ヒルズ
ありふれたおはなしが
ささやかに座っています
テーブルの上
紅茶が入ったカップの横
読みかけのおはなしは
トコトコ歩きます
誰かの声をとおって
誰かの頭の中へ
沈黙を守って
心のクレバスへ
通勤バスの中
揺られるのは
ありふれたおはなし
地軸に巻きつくのは
ありふれたおはなし
遠い目の向こう
ありふれたおはなしが
ささやかに座っています
それはテーブルの上
食べかけのお菓子の横
紙の上に
しずかに
心のクレバスへ
しずかに
悲しみをのりこえて
地軸に巻きついた悲しみを
のりこえられずに