哀しい雨に歌えば
ホロウ・シカエルボク




重いビートを無視しないで
おまえを、目覚めさせるために
はるか遠くから聞こえてくる重いビート
コーラスガールの太腿にこびりついた
昨夜の味気ない欲望
すべておまえを目覚めさせるために響いてくる
氷のような冷たい雨が頭上から降り注ぎ
誇りをずぶ濡れにしながら新しい音楽の最初の一節を探している
重いビートを聞き逃すな、そんなチャンスは何度も訪れるものじゃない
舞台が暗転したとき
短い夢のように早く
スライドするまぼろしをみたことがあるだろう?
対処できないものについているのはたいてい聞いたこともない単語だ
明日吹く風にはおそらくは今日よりも徹底的に
凍てつく冬の絶望がふんだんに含まれているだろう
重く聞こえるビート、それはもしかしたらいつかおまえを滅ぼすようなものかもしれない、だけど
素敵なものにだけ耳を傾けて生きていくことをはたして肯定できるのかい?
重く哀しいビートだった、途方もないくらい切なく
心の中まで凍てつく雨でずぶ濡れていく気がした、だけど
それは濡れないでいるよりゃ確かにまともなことだったんだ
はるか遠くから聞こえてくる重く哀しいビート、決してそれを無視したりしてはならない
たとえばおまえの陰茎がいかなる汚れも認める気はないといきり立ったところで
食い止めることなど決して出来ない、食い止めることなど決して出来ないぜ
生まれたことを誇りたいなら汚れて濡れて立ち尽くしてみせなよ
そんなふうにしなくちゃいけない、そんなふうにしてみせなければ
誰もおまえのことを認めようなんて考えたりはしない
おまえが諦めようが、泣こうが、首をくくろうが
音楽は必ず遠くから鳴り響いてくる
生きてることを誇れないなら
誇れるまで生きていくしかない
窓を開けて手をかざしてみろ、凍てつく雨はまだ降り続いているか?アスファルトを打ちつける無限の哀しみが聞こえているか?
重いビートを聞き漏らすな、誰もおまえのためにそれを新たにしつらえてくれはしない
重いビートを聞き漏らすな、泣き逃した産声が心臓の底辺で燻ってるのを感じたことがあるだろう?
誰もおまえの欠落に名前をつけてくれたりはしない、それは無数の憤りの中からおまえが拾い上げてまとめなければならないものだ
そこから見える一番派手な傘に石を投げつけろ、護られることに対する嫌悪を存分に塗りつけて
ずぶ濡れになったことのないやつなんか俺は決して信用しないぜ
重いビートを受け止めて初めて
俺とおまえの間にバビロンへの橋がかかるのさ
欄干に立って存分に歌い上げろ、ウー・ラ・ラ
上手く歌い上げているうちは


誰もおまえがそこから落ちるなんて考えたりはしない




自由詩 哀しい雨に歌えば Copyright ホロウ・シカエルボク 2009-11-22 16:05:01
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