こうして少しずつ滅びるのだろう(秋)
木屋 亞万
闇とともに冷え込む山林の
葉はかじかんで赤く染まる
熱を絞りだすように色づいて
焼け焦げたように枯れていく
臍の緒のように乾いた赤ん坊の手の平が
茎の上を這う苔の上に散らばっている
唐紅の葉群れの中で黄金色の紅葉が一本
きめ細かな黄緑の苔からすっくと立っている
柱と軒と床に切り取られた長方形の中に
浮かび上がる秋の庭
トルコ石のような池の中では
大きな鯉が身体を休めている
遠くに見える山々の褪せた紅葉のさまも
冬支度の半纏を着ているようだ
人が大挙して押し寄せる時刻を過ぎて
働くものだけが残されたときの池の静寂
本来はこうあるべきなのかもしれない
山野は沈黙の中で物音を遊ばせる
秋の息、揺れるススキの消え入る穂先
月は頼りなげに細長く
人間である私でさえ
増えすぎた人の無神経さに嫌気がさす
立ち入り禁止の柵を取り払って
禁止規則の看板を消し去れば
この庭は、山はどれだけ美しいだろう
枯れた枝垂桜の骨格に海月のような浮遊感が漂う
若き乙女の太腿のような竹が茂る林に秋の指が駆け抜けて
箱庭のような枯山水をやわらかに波打たせる
岩が痙攣でもしたかのように小石は波打ち
曇天の中で小さな糸月が微笑んでいる