言の葉の軽重
松本 卓也
携帯電話を所在なげに弄りながら
待っていることがあります
至極どうでもいい話題に
途轍もなく軽々しい返答を
返してもらいたいだけなのです
想いが重いなどという
性質の悪い冗句を口にしては
目の前を横切っていった人々
時間のフィルタを通しながら見つめる
笑っていたのかもしれない
嗤っていたのかもしれない
嘗ても今も変わらない
日本語が不自由な唐変木
決まり文句など用意していないから
冗談の延長で済ませるつもり
工夫も技巧も置いてけぼりの
現在進行形のやり取りの中では
こんな軽々しい話題にさえ
重さが伴うというのだろうか
久方ぶりの恋愛模様は
幾度と無く繰り返した拙さと
数少ない成功例を引き合いに
ほんの少し楽しみながら
僕はただ貴女から
真心の篭った言葉を
唯一つでも頂けたら
そう願うのです