東京
モリマサ公

地平線がかぎざぎに囲われた東京を
中央線のガラス窓からのぞいて
ビルたちの壁面は薄黄緑に光る
水の色をしたいろんな影が長くのびて
フラットな装置のように空が広がる
鳥の群れがばらまかれ
ペットボトルの中の水を半分こしたり
記憶として切り取ったり忙しい
眠くない黒目をこすり
健常者としての左足や右足で階段をのぼり
さみしさをまぎらわさず
良く噛み砕く
むきだしのコンクリートや配線や
天井がにじむのがここちよく
どのゲームがはじまったのか
もうおわってしまっているのかわからないまま
自分という風景がホームを離れて
証明されていく毎日に
透明な祈りと電波が重なりながら
地面にはジャンルにはとらわれないいくつもシミが
浮かびまた消えて
果物の味のキャンディーをくちびるにおしこみながら
あたしたちは朝を横切っていく
世界中誰もが吐く息の白さが
同じ白だということ
紅葉樹のはっぱは落ちながら旋回して
月の裏側の温度は変わらない
俺たちは明日死ぬかもしれない
僕は今日が最後かもしれない
背筋をただすと信号機の色が変わり
いくつもの輪郭が
なつかしい








  初出/反射熱第4号  


自由詩 東京 Copyright モリマサ公 2009-11-18 23:57:08
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