朧月

夢をみた
ふかいいふかい沼にはまりこみ身動きもとれず
出せる声は呻くような無様な音のみで
がいこ がいこと鳴くイキモノが迫っては消える

暗いとも明るいとも言えぬ景色は
これがこの世界の果てかと思わせる
死に損なった老人の瞳の中のようで
かえりたいよう と つぶやく植物の群れは
上にむかい 下にむかい その手を伸ばす

希望はどこへいった
はるか昔確かに植えた希望の実は
今だ水面からあらはれてはこず少女の首筋へ
むごたらしい痣を彩ってゆく消してゆく

どこ へ ゆけばいい
迷うあなたは
照りつける太陽を背中に背負い
この私の闇を欲しがって泣く

どろり
沼の一番上の層を 
かきわけて私の両の腕が
かすかに動いたその隙を見て
どうか あなた
太陽を投げ込んで

ごぼりごぼり と太陽は沈み
イレヌナ イレヌナ と騒ぎ立てる闇のものは
一瞬にして吹き飛ぶ 

この世界は太陽を失くし 正義を失くし
夢も愛も無くなった 

呆然とたちつくすあなたは やがて
私のいる沼へと足を踏み出し
そして 私はあなたを受け入れ 
やっと静かに永遠に眠れると思うのだ


自由詩Copyright 朧月 2009-11-18 12:24:38
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