ち へ い へ
……とある蛙

地平線の彼方に大きな夕日が沈む
地平線の見える大地など、僕の住んでいる街には無いのに。

無いのだが、地平線を僕達は確かに感じとることができる
感じ取ることができるので
僕は地平線に向かってゴミゴミとした露地を歩いて行く
できるだけ真っすぐ歩いているのだが
何とは無く露地は R をがあり、夕日の沈んだ地平線とは
随分違った方向に向かって俯いたまま歩いていたのです。

着いた先に立ち食い蕎麦屋があったので
天玉蕎麦を頼んで、そこで働いているバイトに尋ねた。
「地平線はどっちにあるの?」
バイトは
「僕はバイトだから分かりません」
「一日中歩き回っているカドの野良猫にでも聞いたらどうですか」
やはりバイトはバイトだ
ちくわの天麩羅を半分残したまま
僕はまた歩き始めたのです。
「自動販売機は大嫌いだ。こんなガラガラの店、一言で注文は済むのに」と捨てぜりふを残して

カドの野良猫って何だ、どこにいるんだ。
などと思って路地を歩いていると
ニヤニヤ笑っている、妙に平べったい顔をした黒猫がこちらを見てる。
僕は土産物のにぼし……な何で僕はにぼしを持っているのか。
「君がカドの野良猫かい?」
と尋ねた。
「何の話でぃ?」
黒猫はニヤニヤしながら人間の言葉では話す。

「立ち食い蕎麦屋に聞いたんだよ」
と話すと黒猫は
「奴はバイトだ。何も知らなねぇなぁ。」
孤立 一人 孤独
黒猫宣うに
地平線に行こうとする奴はそんな奴しかいないそうだ。
地平線のことは結局何も言わずじまいだ。


さらに
地平線にたどり着いたものはいないと黒猫は言う
当たり前だ。
遠くから見るから地平線はあるように思えるだけだ。
現実に地平線があるわけではない。

でも僕にはまだ地平線があるような実感がある。

絶対に近づけない地平線に向かって
また歩きだすべきか思案している僕の頭は
あの黒猫の話を聞いて
ますます混乱していった。


自由詩 ち へ い へ Copyright ……とある蛙 2009-11-16 23:51:11
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