収監
瀬崎 虎彦

不幸でなければいいと僕が祈る囚人たちは
言語を弄んだ罪でここに囲われている
したこともない恋愛を歌い
自分があたかも天才であるように振舞った罪で

ついに国家は統制に乗り出し言語著作権を制定
なけなしの金を払って人々は日常言語を購入し
専門用語に関してはオプションでバージョンアップ
隣の国では違法コピーがやまず皆英語をしゃべりだす

さて鳥が国境を越えることに気がついた野蛮な男
知的著作物のスパイ行為認定を求めて
複数の国家に対して訴訟を起こした

そのころ僕は誰にでも分かる言葉で
誰にとってもどうでもいいラブソングを
三つくらい作って気持ちよく寝ることにした


自由詩 収監 Copyright 瀬崎 虎彦 2009-11-16 19:53:00
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