ジャッジメントをぶっとばせ
笠原 ちひろ
しろいしかくのなかの記憶は日に日にとおくなりにけり
初の外来診察で茶色い合皮の長いすに座ってるときあんたたちに会った
イズミヤに買い物に行くんだって
五人のあんたたちに三人の看護婦さん
「オッス」とかわす挨拶がなんで
なんとなくうしろめたいんだろう
あたしは外にいて
あんたたちはこんなにもつきそいがいなけりゃ
あのトビラをこえられなくて
だからか?
あたしはたぶんいまのところ快方にむかってて
あんたたちはたぶんもうしばらく
もしかしたらもっとそこにいる・・・んじゃないかと思ってしまう
だからか?
面会にきたばーちゃんに
「これだって経験だし。本気でおもってるし」
っつってニッと笑って
かわいそうだとおもわないで
と怒りにも似た気持ちで
ニッと笑って
他人の当惑がうっとうしくて
「すべてのひとはみなおなじ」
と
身内と親類と彼氏の家族
重点的に
アルカイックスマイルで
みんな続々と
悟りをひらけば楽なのに
なんて詮無く甘ったれたこと思っちゃってたりしたのにさ
つか
自分が悟り開いたほうがはやいじゃん!
なんて
だめだめダーリン
まだまだムリっす
だって
なんで
「オッス」
という挨拶ひとつに
動揺しちゃうんだよ?
いっしょだったのに
いっしょなのに
ああ
ジャッジメントをぶっとばせ!
ジャッジメントをぶっとばせ!
ジャッジメントをぶっとばせ!
ジャッジメントをぶっとばせ!
ああ
こいつはものの道理がわかってて
こいつはまるで駄目
なんて
そういうあたしに
なにがわかってるってんだよ?
ジャッジメントをぶっとばせ!
ジャッジメントをぶっとばせ!
ジャッジメントをぶっとばせ!
ジャッジメントをぶっとばせ!
くそったれ!
すべてのジャッジをこえてGO! だ。