テストの日
伊那 果

 どれが当たるのか
 さっぱり見当がつかなくて
 とりあえず手元の教科書と資料集と問題集を詰め込んで
 いつものかばんからもう一度出して
 リュックに詰め替える
 テストの日の朝

 一夜漬けをするはずが
 いつもより早く寝てしまった
 早起きするはずが
 いつもと同じ時間になった
 
 あといくつの単語を詰め込めるか
 バス停へと急ぐ道
 冷たい風がなでる
 今日に限って
 5分遅れのバスが10分遅れている

 単語帳をめくる
 あといくつ頭に放り込めば
 確率が高まるんだっけ

  賢い恋人に
  単語テストをする映画があったな
  イチョウの木の下で
  寝っころがりながら
  えーなんで勉強ばっかするのって
  女から見たって
  とってもかわいい

 あたしも そんなふうに なりたかったな

  単語帳の上を
  黄色い葉っぱが撫でていく

 そう
 あと15個頭に放り込んでも
 たぶん2点か3点 よくて8点かな
 
   テスト中に気になる
   寝癖のついた髪の毛
   シャーペンの先を
   口元でちょんちょんとする仕草

 届かなくても
   
   それはそれで幸せなんだ

 人を想うって幸せなんだ
 あなたの残像が
 頭をよぎる
 テストの日の朝


自由詩 テストの日 Copyright 伊那 果 2009-11-16 00:33:08
notebook Home