夕日
蒼木りん

さて
己の望みはなんぞいや

近頃は
気楽を失っていたために
家の中には雨雲がおおっているようだった
気楽過ぎて
お人好しになってはけないと
知恵のない頭で
先手後手を考えていたせい
嫌いなものはどうしても嫌いなんだと
つまらないものに引っかかっているせい

油絵のオイルの匂いが好きだ
折りたためるイーゼルが好きだ
鞄にスケッチブックを入れて
家出してみたいな
子が独立したら決行しよう
あなたと親族の道具として
磨り減っていくのは悔しい
まだひとりで歩けるうちに
置手紙

器用貧乏なだれか
不器用金持ちって稀
自販機の下にお金が落ちていないか
眼を泳がせてる少年
母親は少し知恵遅れで
しょぼい男に騙された
冬の寒さに
心まで冷たくならないように
凍えて眠らないように

ゴミ収集車の音がする
アルミ缶やペットボトルの日
この一年金がないから
ビールもジュースも飲まない
ゴミも出ない
酒癖の悪い年寄りの
報いは腫瘍の数だけ
特大の焼酎の瓶も
今は様ないね

黒雲は
豆台風が家の中に居る所為さ
意地悪な顔した捻くれ者の
腹の中の蟲下し
憎い憎いの
我がこころの滑稽さ

わたしは太陽
君の見る空を青くする
気づかなくていい
高い空からわたしが見ている
気づいたら
わたしは赤い夕日になってしまう




自由詩 夕日 Copyright 蒼木りん 2009-11-15 21:14:07
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