中耳炎
ゆえづ
ヘリコプターがパタパタとうるさい
なんだあれ
空で布団叩いているみたいだ
さっきまで君の夢を見ていたと思う
頭を傾けるたび隙間が空く
脳がたぷんと跳ねる
ああ潮の匂いだ
私は液化している
じわりじわりと溶かされて
君の名も忘れる頃には
私は完全に自由だ
ごぉん
遠くなるエンジンノイズ
いまだ匂やかに
記憶は白磁のティーカップの中
琥珀色の光を湛え
ぬるい朝を掻き混ぜている
君の笑顔が歪み
私はうっかり手を滑らせた
ぱしゃん
キッチンの床でかたつむりが砕けた
自由詩
中耳炎
Copyright
ゆえづ
2009-11-14 02:39:06