シーシュポスに死を!
佐々宝砂

昨日と今日は同じだと嘆くひとは
今日が今日のままであることを願っている。
自覚のない矛盾がそのひとを支える。

空の星
足もとの雑草
キーボードの上の埃
なにひとつ
昨日と同じではないのだが
いまのところ
内緒にしておこう。

ほっといたってものごとはかわる
桜と紅葉の美しい森は
やがて陽気なくせに薄暗い照葉樹林にかわり
清楚で臭い花の咲く湿原は
やがてあかるくひらけた草原にかわる。

かわらないものを求める自由
美しいものを美しいままとどめようとする自由
かつてと同じ利権を願う自由

自由にしていたらいい。

ほっといたってものごとはかわる
それでも
わかっているのだけど
それでも
わたしはときどきひどくイライラして
シーシュポスの喉元に
ナイフを突きつけたくなる。

石なんか放り出せ
ほうっておけばものごとはかわる。

シーシュポスに死を!


自由詩 シーシュポスに死を! Copyright 佐々宝砂 2009-11-10 05:40:59
notebook Home 戻る