シーシュポスに死を!
佐々宝砂
昨日と今日は同じだと嘆くひとは
今日が今日のままであることを願っている。
自覚のない矛盾がそのひとを支える。
空の星
足もとの雑草
キーボードの上の埃
なにひとつ
昨日と同じではないのだが
いまのところ
内緒にしておこう。
ほっといたってものごとはかわる
桜と紅葉の美しい森は
やがて陽気なくせに薄暗い照葉樹林にかわり
清楚で臭い花の咲く湿原は
やがてあかるくひらけた草原にかわる。
かわらないものを求める自由
美しいものを美しいままとどめようとする自由
かつてと同じ利権を願う自由
自由にしていたらいい。
ほっといたってものごとはかわる
それでも
わかっているのだけど
それでも
わたしはときどきひどくイライラして
シーシュポスの喉元に
ナイフを突きつけたくなる。
石なんか放り出せ
ほうっておけばものごとはかわる。
シーシュポスに死を!