水は紅
あぐり

無いものを描いてベランダ吊るしたら明日はきっと涙雨です
機能しない体温計の水銀はわたしの胸の中身と一緒
質問を垂らしてみたら何重も波紋が踊った恋人の明日
ないているわたしが理解できないと声高に言うあなたの辞書


床を這う午前七時の憂鬱が足を滑らす歩き出せない
にんしきは硝子を伝う雨粒で拭いても拭いても跡が消せない
滴って止まらない声押し殺しあなたぜんぶをのみこみたいよ
るすですか?あなたに聞かれた梅雨入りの真昼に鍵を外した間違い


ああいっそ瞳を捜す夜ならば噴き出すシャワーを今すぐ噛め
めくられて裸になるか朝焼けに鱗を剥がして濁る水槽
いいかげんシーツを汚した朝はもう来ないんだよと滲んだ諦め
ろかしてくビーカーの底歪めてる愛は綺麗でかなわんでしょう?


口いっぱい含んだ夢、海。游いでくあなたの背中に生えた淋しさ
紅の花に染み着く泣き言よわたしを口説くそれは哀しさ



短歌 水は紅 Copyright あぐり 2009-11-09 23:54:04
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