引っ越し
衛実
4日の日に
上の階の人が引っ越すらしい
4日といえば
わたしは健康診断の日だ
わたしがお腹やら喉やら
胃腸のはたらき具合なんかを
ぐるぐる調べられている時分に
かれらは荷物をくくって
知らないところへ行ってしまうのだ
まるで交流なんてなかったけれど
居ないは居ないで
変な気分になるのだろう
ベッドに寝っ転がって
天井を見上げた
夜遅くまでガタガタ動いていた
洗濯機の音や
朝早くからブツブツ聞こえる
ニュースの声
なんかまでも
懐かしくなったりするのだろうか
(あしもとの方がぼんやり浮き上がってくる感じ。
幽体離脱ってちょうどこういう感じ?)
窓の外から
刺すような雨ふりの音がする
明日の朝まで降りどおしになるらしい
マンションの最上階は空っぽになって
わたしの一番上にある器官も
少しだけ空になる