白岩鉱山軌道の静寂
kauzak
飯能市街を抜けて山間へ
僕の運転する車は
滑らかに進んでいく
しだいに狭まる谷を抜けると
山間の集落が現れる
カヌー工房とか
材木屋とか
しゃれたパン屋とか
横目に見ながらあっという間に
集落を通り過ぎて
川原キャンプ場への道に入る
道は急に山道の様相を呈して
鉱石を載せたダンプが
道幅いっぱいに下りてくるから
その度ごとに路肩に避けて
二キロも登るとキャンプ場に着いた
キャンプ場の駐車場に車を止めて
歩きでなおも山を上って行く
十分ほど歩くと
鉱山のホッパーが見えてくる
できれば鉱山の中に入ってみたいけれど
事務所に突撃する勇気はなくて
鉱山事務所を見降ろせるところはないかと
登山道に分け入るとすぐに軌道が現れる
山肌にへばりつくように
ぬっと中空に渡された桟橋の軌道は
登山道にぶつかるようにプツリと途切れていて
桟橋の奥にある車庫から
トロッコが覗いている
斜め下に目を移すと事務所の脇の軌道上に
山吹色のロコも確認できて
二十一世紀の東京の近郊に
いまだトロッコが息づいている奇跡
鉱石を載せたダンプが下りて行った
ということは
今日の仕事はもう終わってしまったようで
ロコが動き出す気配はなかったけれど
夢中でシャッターを切っていた