漂白の意図
相田 九龍

あの人は、なぜ孤独を感じないのだろうか
空を埋め尽くすほど広がる楕円形の雲が
優雅に進む鯨の群れのように見えた


しばらく人とは会えない
門番の役目は
乳白色の雲と
深く厳しく断絶されることに始まる
少し遠くに見えるアパートの前
子供たちがとても元気だ
鯨たちの泳ぐ高い高い空が
その色彩で夕刻を告げる



弱いものから消えていく
それらと潔く共にあることを願いながら
私はここで門番などしている
弱いものが死んで
残った者たちの骨はどこまでも健康で
私たちの水は見事に濁っていく

共に消えるべきなのか
ああ
今まで
出来るだけ
白の言葉で悲しみを抱いた
それでも永遠に
私自身は白くはなれない
漂白の意図は
私から多くの本当を奪った



誰かが開いた門を
知らず知らず通り過ぎてしまう
それが当たり前なのだ
そう思うように仕組まれた門も
振り返れば驚くほどに遠い



私がここで番をして
一体誰を止められるのだろう
鯨たちは頭上を悠々と越え
刻々と深まる夜に
断絶のみを残して溶けた
そうしていつも
寂しさはあらゆるものを通して強調された

アパートの前の子供たちも
いつの間にかいなくなっていた
私にとって
世界のあらゆるものは牢獄になり得た
でも本当のところ
あの人の孤独を感じない心が
私の孤独のすべてだった


自由詩 漂白の意図 Copyright 相田 九龍 2009-11-07 01:20:29
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