夜と手のひら
木立 悟





燈火のなかに小さな樹があり
燃えることなく
夜を緑に染めている


下からの光 螺旋の影が
まるいかたちを
ゆうるりとつかみ
ゆうるりと離し
くりかえす


耳のうしろ
夜の指
路の央に立ち
熱をなぞる


ひらき ひらき
音を受ける
天に向かい
まなざしを明かす


刃に添う手
球を描き
夜の外側
灯と譜をひろう


影のもとへ
影は馳せる
静まる路の
勾配を聴く


雨とともに
幾つかの冬が動いている
曇下の夜が
冬と冬のはざまにかすむ


起伏を均す低い灯を
暗がりから見つめるもの
白い花の群れがゆうるりと
四つの廃線を横ぎってゆく


見えないくらいの
ひとつの小ささを支えている
花のように
わたるもののない
夜のように


水にひらき 息にひらく
路の先に 音は浮かぶ
あふれるもの こぼれるものを
踏みしめてゆく























自由詩 夜と手のひら Copyright 木立 悟 2009-11-06 23:36:49
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