カット詩集
生田 稔

カット詩集(文芸雑誌やハンカチ、茶碗などの片隅にそっと添えておく詩)

「迷」

サンドラボッチ
瑠彫
おみやげ三つ、蛸三つ

おしまいさ
おしまいさ
サンキュー

「冬」
寒き日の野木瓜
落葉みむ
ヴィヴァルディーしみゆく

「秋」
一日かぼちゃ煮る
ショスターコーヴィッチ一番
寒さ増して

「幼」
いっぱいの椎の実を
ハチの子をたべ
椋の実はほの甘い

雲の漂う知内浜
枯れ葦のまに鴨の群
野鳥むれ

「正月」

知り人嫁ぐあたりらし
昆布茶
白鳥は居ず
岡に降る雪
雪は降り薪ストーブ
ホタテ雑炊外はやみ

「純」
寒中に赤ワイン
母くれしペン夜寒に
異国の空の寒き夜

「霜」
友情を思う立冬に
湧き水のそば霜月
永久の命をと小寒き日

「絵」
絵につきて悟りを開く
高く飛び人に勝や冬の蝶
今日は写楽でノベンバー

「草」
浅き冬・琵琶湖・三上山
水草実栗生ふる池
咲き乱れにし夕の菊

「温」
菊咲きて秋
読書とともに足温器
息子描く絵のおおらかさ

「黒髪」

黒髪や秋っ中
茄子料理・キリンかな
色付きの小石買い


「鳥」
枯れ葦に小波ゆらぐ
沈みゆく夕陽の姿
風吹きすさぶ湖辺に鴨ら遊びて
十二月水面低く飛ぶ鳥
近江富士かすみていくばくの雲
湖べにショパンの曲
かげり行く夕陽後ろに
                            
「閑居」
閑居して愚善をなす
体操をすべし
茶を呑むべき
ねむい昼
窓辺の椅子に
秋風がふうわりと


「カタバミ」             
カタバミよ道の辺に
不思議な音色グリーク
書物などと秋深し

「悲」
寝室の外しのび音が
二人だけただ二人だけ
なんとなくいつも悲しい

「昼」
鳩と共紅葉散り
椅子にもたれ神無月
目醒めれば秋風が





「長明石」
半里ほど秋の長明石
寿司田屋に
秋の暮れ

「妻」
妻道端にしゃごみて野菊摘む
鳶五羽ひつじ田に
白きコスモス摘んでやる


自由詩 カット詩集 Copyright 生田 稔 2009-11-03 16:14:02
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