濡れ髪の三千院
atsuchan69

放埓に道の辺を埋めては幾重にも重なり
紅く、山もみじの朽ち葉を華やかに散らして
浄土の途には細やかな初しぐれ、
ただ傘もなく二人痩せた身を苛む。

勾配のぬるい瀝青の坂道には影もなく
緋色の罪を纏った女が私の後につづいた
去々日、夜通し待ち惚けた一途な君へ
あれは已むを得ぬ用事でと云い

小刀で胸を貫いたように心乱れて
律の音なし、
呂の音なしのまま
幽かに震える唇が焦れる

瑕瑾の責めを胸におぼえて
辛く始まる、かくも呪わしい朝も、
息も殺して忍ぶ喧騒の昼も、擦違う夕も、
狂おしく眠れぬ夜更けも、尚。殊更に

ああ。
あ、あ、ああ・・・・
ふたり嗚咽し、呂律のまわらぬ舌で、
その淫靡なる互いの名をつぶやく

 ――いつか想いを遂げる
 虚しく、朽葉となった言葉たち――
 
茶屋のならぶ呂川に沿って辿り
やがて石段の上に朱雀門が覗くと
「ええ。あの向こうが極楽院。
濡れた髪の女の貌が、ほんのすこし色めいた
















自由詩 濡れ髪の三千院 Copyright atsuchan69 2009-11-03 00:46:33
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