せめて
あぐり





波に揺られているのがあたりまえでした
足が地に着いていたことなど稀で
たくさんのしあわせに濡れては
なんて、寒いんだろうって思っていた

あなたがとてもかなしそうで
あなたのゆびにふれようとしたら
もうすっかりひえきっていたその傷に
ざあざあと後悔が満ちてきて
ざあざあざあざあ
動かせないくちびるはなんて都合良いのだろうね
ほんのすこしの誠実さでわたしは

壊れてるものが愛しくて
わたしに愛された誰よりも今は
わたし、あなたに愛されているのに
髪を撫でてくれる手はきっと
恋じゃなくて、もう愛に近い
わたしなんか
わたしなんか
大切にしなくていいよ
おねがい
壊してしまえばいいよ。
あなたの
せいいっぱいの涙に
ごめんねも
ありがとうも
すきだよも
あいしてるも
なにもかもが軽くなって
なんのための
わたしの言葉か見分けがつかなくなって
ざあざあと
染まる赤い葉の揺れる音だけ
目を瞑ってなぞっていた

かなわない夜の底に
沈んでいたら
あなたが背中をさすってくれて
それはもう愛に近くて
どうしてわたしがわるいのに
どうしてわたしがないてしまうのかな
たぶんきっと
それでも好きだと囁いてくれるあなたの
からだをどうか冷やさぬように
あなたにとってわたしは
ただしいただしい
恋人でいたい






自由詩 せめて Copyright あぐり 2009-11-02 21:01:58
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